個人信託と家族信託の種類
個人信託は、個人の生活支援、財産管理、相続などを目的として利用される信託の総称です。金融機関が受託者になる商品と、家族などが受託者になる民事信託があります。
| 種類 | 主な目的 |
|---|---|
| 家族信託 | 家族による財産管理と承継 |
| 遺言代用信託 | 本人の死亡後、指定した家族などへ財産を給付 |
| 後見制度支援信託 | 成年被後見人の金銭を安全に管理 |
| 教育資金贈与信託 | 一定の制度要件に基づき教育資金を管理 |
| 特定贈与信託 | 特別障害者などの生活安定を支援 |
| 公益信託 | 奨学金、福祉、文化、環境保全などの公益活動 |
「家族信託」は信託法上の正式な制度名ではなく、家族などが受託者となる民事信託の一般的な呼び方です。
信託基金を日本で作る方法
日本の信託法では、主に次の方法で信託を設定できます。
- 委託者と受託者が信託契約を結ぶ
- 遺言によって信託を設定する
- 一定の方式による意思表示で自己信託を設定する
家族信託では、親と子などが信託契約を結ぶ方法が一般的です。
家族信託を設定する基本的な流れ
- 信託を使う目的を明確にする
- 委託者・受託者・受益者を決める
- 信託する財産を特定する
- 管理方法・給付条件・終了条件を決める
- 受託者を監督する方法を検討する
- 信託契約書を作成する
- 必要に応じて公正証書を作成する
- 不動産の信託登記や専用口座の準備を行う
- 信託開始後の帳簿・収支を継続して管理する
信託契約書には、受託者が行える行為、生活費の給付額、不動産を売却できる条件、受託者が死亡・辞任した場合の後継者、信託の終了時に財産を受け取る人などを記載します。
口頭の約束だけで管理しない
信託する財産が高額である場合や不動産を含む場合は、家族間の簡単な覚書だけでは、金融機関や法務局で手続きが進まないことがあります。
内容に不備があると、目的とする不動産売却ができない、口座を作れない、税務上の扱いが想定と異なるといった問題が生じる可能性があります。
日本で信託を作る費用はいくら?
家族信託には、全国一律の設定料金はありません。財産の種類、評価額、家族関係、契約内容、依頼先によって費用が変わります。
主な費用項目
- 信託契約書の作成支援費用
- 弁護士・司法書士・税理士などへの相談費用
- 公正証書を利用する場合の公証人手数料
- 不動産を信託する場合の登録免許税
- 司法書士へ登記を依頼する場合の報酬
- 不動産の評価資料や証明書の取得費用
- 信託専用口座の管理費用
- 信託開始後の会計・税務申告費用
金銭だけの比較的単純な信託と、複数の不動産、会社株式、受益者を段階的に変更する信託では、設計や管理の負担が大きく異なります。
初期費用だけでなく、受託者が長期間にわたって記録を残すための費用や、税務申告が必要になった場合の継続費用も確認しましょう。
信託基金の引き出し制限は何歳まで?
信託基金に共通する「18歳になれば引き出せる」「25歳まで引き出せない」という統一ルールはありません。
給付を開始する年齢、金額、回数、使い道は、信託契約や遺言の内容によって決まります。
設定できる条件の例
- 18歳から毎月一定額を給付する
- 大学への入学時に学費を支払う
- 25歳になった時点で残額の一部を渡す
- 住宅購入時に一定額を給付する
- 医療費や生活費に限って支払う
- 受益者の判断能力が低下した期間だけ管理する
ただし、契約に書けばどのような制限でも必ず有効になるわけではありません。法律に反する目的や、実行できない条件、受益者の権利を不当に害する設計は問題となる可能性があります。
海外のtrust fundで一般的な年齢条件を、そのまま日本の信託へ当てはめることもできません。適用される国や地域の法律を確認する必要があります。
家族信託を遺産相続に使う仕組み
家族信託では、本人の生前から財産管理を始め、死亡後に誰が受益権や残った財産を受け取るかを定めることができます。
例えば、委託者兼受益者である親の死亡後、配偶者を次の受益者とし、配偶者の死亡後は子へ残余財産を渡す設計があります。
家族信託で可能になること
- 認知症発症後も受託者が契約に従って財産を管理する
- 賃貸不動産の管理や修繕を継続する
- 生活費を毎月決まった方法で給付する
- 死亡後の財産承継方法を事前に定める
- 共有不動産の管理方法を整理する
相続手続きがすべて不要になるわけではない
信託財産以外の預金や不動産は、通常の遺産分割や相続手続きの対象となります。また、信託受益権や残余財産の扱いによっては、相続税申告や名義変更が必要です。
信託を設定しても、遺留分を巡る問題や家族間の対立が自動的になくなるわけではありません。遺言、任意後見、生命保険、法人化などとの比較も必要です。
信託基金のメリット
- 判断能力低下後の管理に備えられる
受託者が契約に基づいて不動産や金銭を管理できます。 - 給付方法を細かく設計できる
年齢、目的、金額、給付頻度などを定められます。 - 財産承継の希望を反映しやすい
死亡後の受益者や残余財産の帰属先を設定できます。 - 信託財産を分別管理できる
受託者の個人財産と区別して管理されます。 - 長期間の財産管理に対応できる
受託者を交代する仕組みを設けることができます。
信託基金のデメリット
- 契約設計が複雑
将来の家族関係や財産処分を想定して条項を作る必要があります。 - 受託者の負担が大きい
帳簿作成、分別管理、給付、税務手続きなどが必要です。 - 受託者とのトラブルが起こる可能性がある
権限が広すぎると、他の家族が管理状況を確認しにくくなります。 - 費用が継続的に発生する場合がある
登記、税務、専門家への相談などに費用がかかります。 - 金融機関の対応が統一されていない
信託専用口座や融資の対応は金融機関ごとに異なります。
信託基金で差押えを防げる?
信託には、信託財産を受託者自身の財産から切り離す倒産隔離機能があります。受託者個人の借金に関する債権者は、原則として信託財産へ強制執行できません。
ただし、信託基金を作れば、あらゆる差押えを防げるという意味ではありません。
差押えなどが問題となる例
- 信託財産に関する取引から生じた債務
- 信託前から財産に設定されていた担保権
- 受益者が持つ受益権に対する差押え
- 債権者を害する目的で設定された詐害信託
- 委託者が実質的に財産を自由使用している場合
借金の返済や税金の支払いを免れる目的で信託を設定しても、債権者から取り消しを求められる可能性があります。信託は、財産隠しや強制執行逃れのための制度ではありません。
信託基金には節税効果がある?
家族信託を作るだけで、相続税や贈与税が自動的に安くなるわけではありません。
信託税制では、形式上の所有者である受託者ではなく、実際に利益を受ける受益者を基準に課税することが基本です。
委託者と受益者が同じ場合
親が財産を信託し、親自身が受益者となる自益信託では、信託設定時に財産的な利益が他人へ移っていなければ、通常はその時点で子への贈与があったとは扱われません。
ただし、不動産登記や管理に関する税金・費用が発生する場合があります。
委託者と受益者が異なる場合
親が財産を信託し、子や孫が無償で受益権を取得する他益信託では、原則として受益者が信託に関する権利を贈与で取得したものとみなされ、贈与税の対象となる可能性があります。
死亡により受益者が変わる場合
委託者や受益者の死亡を原因として別の人が信託に関する権利を取得した場合は、相続税または遺贈としての課税が問題になります。
実際の課税時期と評価方法は、受益者、受益権の内容、財産の種類、対価の有無、信託終了時の帰属先によって異なります。
贈与税は引き出した時にかかる?
信託の贈与税は、銀行口座から現金を引き出した時だけを基準に判断するものではありません。
原則として、受益者が対価を支払わずに信託受益権を取得した時や、受益者変更によって経済的利益を受けた時点で、贈与税の課税関係が生じる可能性があります。
例えば、子を受益者とする信託を設定した場合、実際の現金給付が数年後であっても、契約開始時に子が受益権を得たと判断される場合があります。
「お金を受け取るまでは税金がかからない」と一律に考えず、契約を締結する前に税務上の取扱いを確認することが重要です。
2026年4月から公益信託の担い手と財産の範囲が大きく変わりました。実在する助成基金や奨学基金との違いは次のページへ。


