保有している株について突然「MBOを実施する」と発表された場合、「株価はどうなるのか」「TOBに応募したほうがよいのか」「上場廃止になったら持っている株はどうなるのか」と戸惑うこともあるでしょう。MBOは企業の経営陣が参加して会社を買収する取引で、上場企業ではTOB(株式公開買付け)と、その後のスクイーズアウトを組み合わせて非公開化するケースが多く見られます。この記事では、MBOとは何かという基本から、株価への影響、TOBとの違い、メリット・デメリット、上場廃止までの流れ、既存株主が確認すべきポイント、実際の過去事例まで、2026年8月時点の制度を踏まえて平易に解説します。
この記事の目次
- MBOとは何か
- MBOを行う主な目的
- MBOとTOBの違い
- MBOが発表されると株価はどうなるのか
- MBOで上場廃止になるまでの流れ
- MBOが既存株主に与える影響
- MBOのメリット・デメリット
- MBOの過去の事例
- MBO発表後に確認したいポイント
MBOとは?「経営陣が参加する企業買収」のこと
MBOとは「Management Buyout(マネジメント・バイアウト)」の略称です。
経済産業省の「公正なM&Aの在り方に関する指針」では、MBOについて、現在の経営者が全部または一部の資金を出資し、事業の継続を前提として一般株主から対象会社の株式を取得する取引と整理されています。
簡単に表現すると、その会社の経営をよく知っている現経営陣が買収側に参加し、自社の株式を取得する仕組みです。
ただし、経営者個人が会社の全株式を自分のお金だけで買うとは限りません。上場企業のMBOでは買収金額が数百億円、数千億円規模になることもあるため、実際には投資ファンドや金融機関などと協力し、買収目的会社(SPC)を設立して買収するケースがあります。
MBO=必ず上場企業というわけではない
MBOは非上場企業でも行われます。たとえば中小企業の事業承継で、経営陣がオーナーから株式を取得するケースも広い意味でMBOに含まれます。
一方、株式市場で大きく報道されるMBOの多くは、上場企業の経営陣が投資ファンドなどと協力し、一般株主から株式を取得して株式を非公開化するタイプです。
MBOの目的は?なぜ上場企業が非公開化するのか
MBOを実施する目的は会社によって異なるため、「MBOをする会社には必ず○○という事情がある」と一括りにすることはできません。
公表資料で一般的に説明される目的としては、次のようなものがあります。
- 中長期的な視点で経営改革を進める
- 短期的には利益を圧迫する大型投資や事業再編を実施する
- 経営陣と株主の立場を近づける
- 意思決定を迅速化する
- 上場維持や投資家向け情報開示に伴う負担を見直す
- 外部の投資ファンドなどの経営資源・ノウハウを活用する
- 事業承継を進める
「業績が悪い会社だからMBOをする」とは限らない
MBOは経営不振企業だけが利用する制度ではありません。利益を出している企業であっても、今後数年間に大規模な改革や投資が必要だと経営陣が判断し、株式市場から離れた環境で経営改革を進めるためにMBOを選択することがあります。
したがって、MBOの発表だけを見て「経営危機だ」「将来性がない」と判断することは適切ではありません。会社が公表するMBOの目的、事業計画、財務状況などを個別に確認する必要があります。
MBOとTOBの違いは?同じ意味ではない
「MBO TOB 違い」で最も重要なのは、MBOは買収の形態、TOBは株式を取得するための手続だという点です。
| 項目 | MBO | TOB |
|---|---|---|
| 意味 | 経営陣が参加する企業買収 | 株式公開買付け |
| 何を表すか | 誰が・どのような立場で買収するか | どのような方法で株式を買い付けるか |
| 目的 | 非公開化、経営改革、事業承継など | 一定の条件を示して多数の株主から株式を取得する |
| 組み合わせ | TOBが利用されることが多い | MBO以外の企業買収でも利用される |
上場企業のMBOではTOBが利用されることが多い
たとえば、経営陣と投資ファンドが共同で上場会社を非公開化するとします。
一般的な二段階買収では、まず買収目的会社などが「1株○○円で買います」という条件を提示し、TOBによって株式を取得します。その後、TOBに応募しなかった株主が残っている場合には、株式併合などのスクイーズアウト手続を進め、最終的に株式を非公開化します。
つまり、
MBOという企業買収を実現する手段としてTOBが使われる
と理解するとわかりやすいでしょう。
2026年5月から公開買付制度が改正
日本の公開買付制度は2026年5月1日に改正制度が施行されています。金融庁によると、企業支配権に重大な影響を与える買付けに関する従来のいわゆる「3分の1ルール」は30%ルールへ見直され、市場内取引についても一定の範囲で規制対象となりました。
公開買付規制には多数の要件や例外があるため、個別案件について「○%取得するから必ずTOBになる」と単純に判断することはできません。実際の案件では公開買付届出書などの正式資料を確認することが重要です。




