MBOとは?株価はどうなる?TOBとの違い・上場廃止・既存株主への影響をわかりやすく解説

MBOのメリット・デメリットを整理

MBOには企業や経営陣にとって期待できる効果がある一方、注意すべき点もあります。

MBOの主なメリット

  • 中長期的な経営判断を行いやすくなる可能性がある
    短期的な業績への影響を伴う投資や事業再編について、長期的視点から検討しやすくなる場合があります。
  • 意思決定を迅速化できる可能性がある
    株主構成が整理され、経営陣と株主の方向性が近づけば、経営判断を迅速に進められる場合があります。
  • 上場維持に伴う負担を見直せる
    上場企業には法定開示のほか、証券取引所のルールに基づく情報開示やIR活動などが必要です。非公開化すれば上場会社として必要だった対応の一部は不要になります。
  • 外部パートナーの経営資源を利用できる場合がある
    投資ファンドと共同でMBOを実施するケースでは、資金だけでなく経営ノウハウや人材などの支援を受けることがあります。

MBOの主なデメリット

  • 株式市場からの資金調達手段を失う
    非上場化した会社は、上場株式を新たに発行して市場から資金を調達する方法を利用できなくなります。
  • 買収資金の負担が発生する
    MBOでは金融機関からの借入れなどを利用することがあり、買収後の企業グループに財務負担が生じる場合があります。
  • 上場による市場の監視機能が弱くなる可能性がある
    上場廃止後は株価という市場評価がなくなり、上場会社に求められる情報開示も変わります。
  • 一般株主との利益相反が問題になる
    MBO特有の重要な論点です。

MBOで特に重要な「利益相反」とは?

MBOでは、一般的な第三者による企業買収とは異なる問題があります。

株式を売却する一般株主にとっては、当然ながらできるだけ高い価格で買ってもらうことが望ましいと考えられます。

一方、買収する側に参加する経営陣にとっては、買収価格が低ければ必要資金を抑えられます。

さらに経営陣は、外部の一般株主より会社の経営状況や将来計画について詳しい情報を持っています。

このように、MBOには構造的な利益相反と情報の非対称性が存在することから、取引価格や手続の公正性が非常に重要になります。

経済産業省も公正な手続を重視

経済産業省の「公正なM&Aの在り方に関する指針」では、MBOなどの利益相反が問題となる取引について、一般株主の利益を確保するための公正な手続が重視されています。

実務上利用される公正性確保のための措置には、案件に応じて次のようなものがあります。

  • 独立性を有する特別委員会による検討
  • 独立したファイナンシャル・アドバイザーや法律事務所の起用
  • 第三者機関による株式価値算定
  • 買付価格についての独立した交渉
  • 他の買収候補を確認するマーケットチェック
  • 取引条件や検討過程についての情報開示

すべての案件で同じ措置が必須になるという意味ではありません。個別の取引構造や利益相反の程度などを踏まえて判断されます。

MBOの過去の事例

MBOは実際に日本の上場会社でも行われています。ここでは企業および日本取引所グループが公表した資料で確認できる代表的な例を紹介します。

ベネッセホールディングス

ベネッセホールディングスは2023年11月、MBOの一環としてブルーム1株式会社による公開買付けを行うことを発表しました。

公開買付価格は普通株式1株につき2,600円でした。

公開買付け成立後、株式併合など非公開化に向けた手続が進められ、東京証券取引所は2024年5月17日付でベネッセホールディングス株式を上場廃止としました。

大正製薬ホールディングス

大正製薬ホールディングスは2023年11月24日、MBOの一環として大手門株式会社による公開買付けを実施すると発表しました。

普通株式の公開買付価格は1株8,620円でした。

公開買付け成立後に株式併合の手続が行われ、同社株式は2024年4月9日に東京証券取引所スタンダード市場から上場廃止となりました。

スノーピーク

スノーピークは2024年2月20日、代表取締役とベインキャピタルが共同で実施するMBOの一環として、BCJ-80による公開買付けを行うことを公表しました。

公開買付価格は普通株式1株につき1,250円でした。

TOBは成立し、その後の株式併合を経て、スノーピーク株式は2024年7月9日に東京証券取引所プライム市場から上場廃止となりました。

これらの例からもわかるように、上場企業を非公開化するMBOでは、TOB→スクイーズアウト→上場廃止という流れが利用されることがあります。

MBO発表後に既存株主が確認したい7つのポイント

1.公開買付価格はいくらか

まず確認したいのは1株あたりのTOB価格です。自分自身の取得価格とは別に、現在の市場価格や会社が開示した株式価値算定の内容も確認します。

2.会社はTOBに賛成しているか

対象会社は通常、TOBに対する意見を公表します。「賛同」「応募推奨」などの表現だけでなく、その判断理由も重要です。

3.TOB成立の条件

買付予定数の下限が設定されている場合があります。下限に届かなければ公開買付けが成立しない案件もあるため確認が必要です。

4.買付期間

TOBには期限があります。応募を検討する場合は、公開買付期間や証券会社での受付期限を確認します。

5.上場廃止を予定しているか

MBOだからといって自動的に上場廃止になるわけではありません。会社が「非公開化を目的としている」「上場廃止を予定している」と明示しているかを確認します。

6.TOB後のスクイーズアウト方法

TOBに応募しなかった場合にどのような手続が予定されているのか、株式併合などの方法と金銭交付の予定を確認します。

7.公正性確保のために何が行われたか

MBOは経営陣が買収側に関与するため、価格決定の公正性が重要です。

特別委員会の構成、第三者による株式価値算定、買収者との価格交渉の経緯などは重要な情報になります。公開資料には買付価格がどのような交渉を経て決定されたのか詳細に記載されるケースもあります。

「MBOなら買えば儲かる」と考えるのは危険

過去のMBOでは発表後に株価が大きく上昇した事例があるため、MBO銘柄への投資そのものを売買戦略として考える場合もあるでしょう。

しかし、MBOは利益を保証するイベントではありません。

発表後にはTOB価格を反映して株価がすでに上昇していることが多く、TOB価格を超える価格で購入すれば、買付価格が引き上げられない限り十分な売却益を得られない可能性があります。

また、公開買付けが不成立となった場合や条件が変更された場合、株価が大きく変動する可能性もあります。

MBOという言葉だけを材料に売買するのではなく、公開買付価格、市場価格、成立条件、買付期間、スクイーズアウト予定、会社の財務状況などを確認することが重要です。

まとめ|MBOでは「株価」「TOB」「上場廃止」をセットで確認しよう

MBOとは、現在の経営陣が買収側に参加して会社の株式を取得するマネジメント・バイアウトです。

上場企業を非公開化するMBOでは、TOBによって一般株主から株式を取得し、その後に株式併合などのスクイーズアウトを行って上場廃止とする二段階の手法が利用されることがあります。

MBOでTOB価格が発表前の株価より高く設定されれば、市場株価がTOB価格に近づいて上昇するケースがあります。ただし、TOBの成立や株価上昇が保証されているわけではありません。

既存株主にとって特に重要なのは、

  • TOB価格
  • 現在の市場株価
  • 公開買付期間
  • TOB成立条件
  • 会社の意見表明
  • 上場廃止の予定
  • スクイーズアウトの方法
  • 公正性を確保するための手続

を確認することです。

また、MBOとTOBは同じ意味ではありません。MBOは経営陣が参加する「買収の形態」であり、TOBは株式を取得する「手続」です。上場会社のMBOでTOBが利用されるため、両者が同時に報道されることが多いと理解しておけば整理しやすくなります。

上場廃止を目的としたMBOが自分の保有銘柄で発表された場合は、ニュースの見出しだけで売買を判断するのではなく、会社の適時開示資料、公開買付届出書、日本取引所グループの監理・整理銘柄情報など、正式な資料を確認することが大切です。

なお、本記事はMBO、TOBおよび上場廃止の一般的な仕組みを説明するための情報提供を目的としたものであり、特定銘柄の取得・保有・売却を推奨するものではありません。株価は市場環境や個別事情によって変動し、投資元本を下回る可能性があります。実際の投資判断は、各社が公表する最新情報を確認したうえで自身の判断と責任で行う必要があります。

<参考サイト>
経済産業省 / 金融庁 / 日本取引所グループ(JPX) / e-Gov法令検索 / 株式会社ベネッセホールディングス / 大正製薬株式会社・大正製薬ホールディングス / 株式会社スノーピーク